香取神宮の拝殿、本殿の横を通り抜け、杜に囲まれた北参道を桜の馬場が左手に見える場所までたどり着くと、そこに”寒香亭”はあります。ここは香取神宮の一番奥なのです。
寒香亭は明治時代の創業で125年ほどの歴史があります。
手前が土産物店で、続きが休憩所になります。
休憩所の側面にはこのようなメニューが掛かり、ラーメンが逆向きですが、風のいたずらなのか、はたまた寒香亭ご主人のJazzyなアレンジなのか、写真ネタとしてありがたい心遣いです。
土産物の脇を通りガラス戸を開け、休憩所に入ります。
此処は一階の様ですが、実は寒香亭は山の斜面に建てられていて下に居住スペースがあります。つまり休憩所は二階でその屋根上に見晴台があるのです。屋上の見晴台を入れて三階建てです。
お店はとても実直そうなご夫婦が仕切っています。
建物はかなり古いのですが2011年の東北大震災の時も被害はなかった、古い建物は頑丈だと自信を持って仰るご主人です。
元々、山の斜面には梅の木がたくさん生えていて、春先には可憐な花を咲かせていたのだそうです。
今では山の植生が変わってしまい、高木も増え、梅の木は追いやられ、窓から見えていた利根川も見えなくなったと残念なお話です。昔の様に梅の木で斜面を覆い尽くしたら春先の景色はとても素晴らしいのでしょう!窓際に陣取り、梅を見、遠くの利根の流れを眺め、おでんをつまみに瓶ビールを日がな一日飲んでいたいですね。ゴクッ
この寒香亭を詠んだ歌があります。
吹く風はまださむけれど 梅が香る
春心地するやどは このやど
吹く風に負けず梅の木が香り立ち、夢の様に心地よく春の到来を告げる寒香亭を詠っています。
とても色彩感豊かな歌で、建物自体の歴史的外観と共に心に染み入ります。
古きモノには新しきナニカが宿り、時間と共に熟成された空間を構築するのです。生きとし生けるものすべての感覚に真っ直ぐに作用するナニカです。
寒香亭の左手には石段があります。
ここは昔、利根川から船で渡ってきた香取神宮参りの人々の参道だったそうです。
この参道を上がった両側には、神宮の北参道出口に今置かれている石灯籠が過去にはあったのだそうです。
降りてみます。
今はこのように通れません。杜の管理ができていないのでしょう。残念です。
最後にご主人より耳寄りな情報がありました。
11月30日に大饗祭と呼ばれる催しが午後6時より行われるのだそうです。
これは神無月に出雲にお出かけになった東国の神々のご帰還をお迎えして、大忘年会を行うという趣旨のようです。香取神宮の神は東国の守りを固める必要があり出雲に出向けないので、お出かけになった神々にごちそうを振る舞い旅の疲れを癒やすのだそうです。それこそ、お膳は特別な山海の珍味が饗宴されるのだそうです!神々の忘年会、感染防止なんて必要ないのでうらやましい限りですね!
神々のお膳は食べることのできないfunaですが、来春はじめ、梅の花が咲く頃に、寒香亭にておでんと瓶ビールを抱えているfunaがいることでしょう。確実にいるはずです。
カメラを片手に、梅の花咲く時候に!
梅の香と 春心地が 寒香亭に満ちた頃、
funa
コメント