例年11月1日~11月24日までは香取神宮の奉納菊花大会が開催されます。
近隣の菊花愛好家方達の丹精込めた作品が、楼門の内外に華麗に秋を彩り飾られるのです。
いろいろありますね。日本独特の拵え(こしらえ)です。
一部咲いていない部分もあったりしますが、皆なかなかに可憐で、調和のとれた姿ではありませんか。
いろいろ見て回り、funaが一番気に入った拵えは
このような、石に付けた小菊の盆栽です。これチョット庭に置きたいですよね。いいですよねえ。作業机の端っこにミニチュアがあってもいいかな。
しかし、なにやらじーっと見ていると、石の尾根から盆の土まで根が石肌を這い、へばり付いています。
”何じゃ、こりゃー”
と、近くで作品のメンテナンス(不用意に伸びた枝を取り除き、あるときは誘導し、調和を保つ。枯れ葉も1枚ごと丁寧にもぐ)を行っていたおじさんに即座に尋ねました。
”この菊って、来年も咲くんですか?” (あれ?質問が違う!)
初手から自分が本当に知りたい核心を突いては、人生負けます。(そんなたいそうなことか!)
”咲かないよ!”
”そうですよね。菊って11月いっぱいぐらいまでですよね。”
”これね、つくるのに1年半かかるんだよ”
”えーっ!そんなにかかるんですか”
”1年半かけて咲くの今だけですか!”
”この菊、販売してたりするんですか?”
”売り物じゃないよ。”
”だって1年半かけてつくって大変じゃないですか。”
”石と盆は一生モンだし、何世代でも使えるし、後は菊の苗に少し掛かるかな。”
”道楽だよ!道楽”
”クラブとかあるんですか?”(何を言ってるんだ、funa!菊花愛好家クラブ?菊の花を誤解すると一寸ヤバい!)
”クラブじゃないけど集まりが、同好会みたいなのがあって。でも若い人全然いないよ。そのうち誰もやらなくなるんじゃないかな。”
”ことしはさあ、数が全然少ないんだよ。ほらそこの棚の下の段、飾ってないでしょう。例年だといっぱいになっているはずなんだけど。あちこちの菊花展中止になってるでしょう。”
と、関東圏で中止になった菊花展をいろいろ教えてくれた。世界的に猛威を振るっている感染症の影響なのか!
...じゃ、そろそろこの辺で...
”あの菊の根が長く石に這って、下の土まで届いているじゃないですか。どうやってるんですか?”
ここでやっと聞きたかったことを聞くfunaです。
”菊の苗をまず塩ビ管に入れて育てるんだよ。”
成る程、ピンポーン!単純明快な答えです。ヤマイモ方式なのです。
ヤマイモを長くまっすぐに育てるため、土中にパイプを埋めそのなかでイモを栽培し、収穫時にパイプごと掘り出せば途中で折れることもない。
菊の根はイモではないが、塩ビ管に土を詰め片側に菊の苗を植え付け垂直に立てて栽培、根への空気の通りも考え(塩ビ管に小さな穴でも開ける)、下側から水分を与えることで根が伸びてくるのでしょう。
”こんなのはね、まだいいけど、枝振りがね紛れるからね。あっちみたいな一本仕立てのヤツは、一の枝はこっち向き、二の枝はこっち、三の枝はこっちと決まっているからごまかせないんだよ。”
”でもこっちもさ1年半かかるんだよ” ”1年半.........”
道楽と言いながら、少しも楽な道ではない!
おじさんはしゃべりながらも手は止まらず、作品のメンテナンスに余念がない。
ふとまわりに目を移すと、総門あたりの大銀杏の木が見事に黄に染まっていた。
黄と朱の色彩の妙を奏でる香取神宮総門と大銀杏である。そこに、光と影が霜月の舞台を効果的に演出する。
玲瓏たる秋景色、街歩歓楽!やれ楽し、
*玲瓏たる(れいろうたる。意味:煌々と光り輝く様)
*この言葉使ってみたかったんです!それだけです。
追記
参道を下りながら途途切に願わずにはいられません。
”世界中に猛威を振るう感染症が速やかに収束することを!”
funa
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