水郷佐原、小野川の鴨

小野川の鴨達 小野川界隈

自転車で街を流している。

夏の頃で、いつものように蛇行しながら街を流れる川の側道(川岸通り)を走っている。

通りは昔ながらの木造家屋の商家が立ち並び、両側にはしだれ柳が適度な間隔で生育している。

小野川の柳
小野川の欄干と柳

小さな公園の脇道をとおり川の側道に出る。うなぎ屋が午後の休憩時間である看板を出し、街を流れる時間は緩やかにみえる。少しさきに旧い町家がある。木造の杉の木肌はすっかり黒くなり、通りに面した一面ガラス戸の内側は土間という昔ながらの家だ。

街に流れる空気がいつもどおり淀みない。

突如、川より大量の鴨たちが鳴き声を立てながらあがってきた。百羽近くの若ガモの集団が側道を封鎖した。見ると町家から小柄な男が出てきて鴨たちはそこに集まっているようだ。

「この鴨どうしたんですか?」

「飼ってるんだよ。」

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「ここでですか?」

「そう、観光客も喜んでみてるよ。」

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鴨1
2014年 8月 小野川から上がってきた鴨たち

「えさはね、仲間が古米をもってきてくれるんだよ。よく食べるよ。」

「冬になってさあ、大きくなったら鳥屋に売るんだよ。こいつらは雛で飼ってきたんだよ。」

若鴨たちは元気よく川からあがってきては集団の一員となり路を封鎖し続ける。男は土間の片隅より古米の入った米袋を引っ張り出すと、餌をまき始めた。確かによく喰う。鴨たちは羽つやもよく大変元気である。

これがこの街の日常だ。良きことだ。

鴨の餌やり
2014年 8月 鴨達へ餌やり。いやに頚が伸びている!(笑い)

あれこれ男と話しこんでそろそろ帰ろうとした時、川からあがってきた鴨の中で頚に何かをかけているヤツを見つけた。

「あれ、なんかつけてますよ。」

「え、」

「あ、ほんとだ。」

「何だ?」

そこには、水に強い8センチ四方の紙片がひもで鴨の首にくくりつけられていた。油性マジックで

{冬になったら数羽譲ってください。某たれべえ 電話000-0000-0000}

「鴨ほしいとよ。」

「ああ、あそこの某たれべえさんかあ、よしよし」

鴨白黒
光と遊ぶ鴨

それから1ヶ月ほど過ぎて、鴨飼いの男の家あたりを通りかかった時、ヤナギの幹に張り紙があるのを見つけた。川の側道に生育するヤナギのかなりの本数にその張り紙はあった。

{この付近で生きた鴨000羽を拾得しました。持ち主がわかりませんので、お心あたりの方は下記まで連絡してください。 某市役所 某課 0000-00-0000}

男は連絡しないだろうな。

あの鴨たちはどうなるのか。

市役所も困るはずだ。

ポタリングの政

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